ダイナミクス
- 概要
- 磁気渦格子
- 実験
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ナノスケールの微小磁性体中には、そのサイズや形状の対称性を反映して極微な領域内に比較的単純な磁気渦や単磁区構造が出現する。さらに、これらの微小磁気渦、磁壁や単磁区を高周波磁場と相互作用させると固有エネルギー (固有振動数) を持つ様々なスピン波が誘起される。まず、最も簡単なシステムの1つである磁性体円盤中の単一磁気渦や静磁的に結合した2つの磁気渦や磁気渦格子のダイナミクスについて理論と実験の両面から研究を行っている。
円盤磁性体のように対称性の良い磁性体の場合は、円盤中心に磁気渦が現れ、円盤面内磁場に対してはその移動によって磁化過程が記述される。実際に磁気光学カー効果を用いて磁化曲線を測定すると磁気渦の生成・移動や消滅と相関を持って磁化が変化する様子が観測される。直感的な描像では、磁気渦中心は放物線状のポテンシャル中に閉じ込められた擬似粒子のように振る舞い、外部から印加される振動磁場や回転磁場と相互作用して調和振動する。このような特徴を持つ単一磁気円盤の磁化過程をより詳細に調べるために、磁気光学効果測定とイメージ解析の手法を用いた磁化ベクトル測定システムを開発した。現在このシステムを用いた時間分解測定を行っている。静磁的に結合した2つの円盤の場合、磁気渦の回転固有振動の縮退が解け、2つの円盤の磁気渦中心の分極方向と極性の組み合わせに依存して4つの固有振動が現れ、結合した磁気渦対はエネルギー的にファンデルワールス力によって結びついた2原子分子と同様に振舞うことが分かった。さらに以上の考察は容易にN × N個の2次元磁気渦格子に拡張することができ、磁気渦の分極度の分布に応じて多彩な振動状態密度分布が得られることが明らかになった。すなわち、磁気渦の分極配列や磁気円盤の大きさを人為的に制御することにより振動状態密度を設計できることを意味する。チェッカーボード状に渦の分極が配列している格子の場合、双極子相互作用のために状態密度のピークは単一磁気渦の固有振動数ω0より少し低いところに位置する。一方、交互に分極の向きを変えるストライプ格子の場合はω0を挟んで対称に2つのピークが出現する。以上のように2次元ナノ磁気渦格子はテイラードクリスタルとしての物性を示すことが理論的に示された。※静磁気的に結合した磁気ナノ円盤のエネルギー準位(図)
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パーマロイ円盤においては半径0.5 μm以下で磁気渦構造が現れ、磁気渦の中心は外部磁場の印加に伴って移動する (図1)。ここで外部磁場を取り除いた場合、その磁区構造は円盤のアスペクト比 (半径/厚さ) に依存した静磁エネルギーにより、磁気渦構造へと緩和していく。その際に磁気渦の中心は1 GHz程度の振動数で円盤の中心の周囲を回転する。
我々の理論計算に依れば、このようなナノ強磁性体円盤の間隔を近づけると、分子間力と同様に、距離の10-6に比例した静磁的な相互作用が働くことが分かった [1, 2]。これは約4 × 10-8 eV (10 MHz) の縮退エネルギーに対応する。このような格子を2次元配列した場合には状態密度 (DOS) の増大が生じ、これは縮退が解けることを意味する。その結果、磁気渦の中心がその極性に依存して、円板の中心の周囲を一定の固有振動数で運動する。その振動数は分子間力の場合と同様に、DOS において4×10-7 eV (100 MHz) 程度と見積もられた [2]。さらに、局在モードが格子欠陥において観測可能であると予測される。
図 1: 印加磁場中での磁気渦構造
図 2: (a) 異なる半径を有する磁気渦格子と (b) その状態密度 (DOS) 及び (c) 固有状態の分散関係 [1].
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理論的な予測 [1, 3] を実験的に確認するために、我々は図1に示すような磁気光学カー効果測定装置を作製した。磁気ナノ円盤を配列した細線 (図2) に非常に短い磁気パルスを印加して、高速デジタル・オシロスコープによりその応答を観測し、同時に個々の磁気渦の磁化過程をカー顕微鏡により測定し比較している。
図1:磁気高額カー効果顕微鏡の模式図
図2:磁気ナノ円盤の配置
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